そこはジャンヌ・ダルクでも有名な土地。
当然、ジャンヌダルクのお土産品はそこらじゅうのお店で売られていましたし、駅から歩いてすぐのメインストリートにはジャンヌ・ダルクの銅像が立っていました。
僕はなんとなく、美しい彼女の横顔を眺めながら友人を待っていました。
実は、この物語の原案をその間に作りました。
ジャンヌ・ダルク・・・
彼女は神の御告げを聞くことができたと言われています。
美しき少女は、可憐で華奢な躰を鎧で包み、フランス軍の兵士たちを鼓舞し、イングランド軍を打ち負かしたと言われています。
ただ、僕自身の作家としての癖でしょうか?
違うことを考えてしまったのです。
この物語、できすぎている・・・。
まるで、僕のような劇作家がフランス王太子の耳にこう吹き込んだのではないかと・・・
奇跡の乙女を作り上げましょう
神のお告げが聞こえるというのです。
兵士達は奮い立ち、死をも恐れず戦うでしょう。
もし、この僕の妄想が本当だとしたら、彼女は歴史という舞台で、作られた台本を持ち、奇跡の少女を演じさせられ、最後には命を落とした哀れな乙女ということになります。
でも、ここで妄想を終えてしまったら、彼女は本当にかわいそうな少女で終わってしまう。だから僕はさらに妄想を続けた。例え彼女の伝説が偽りであったとしても、「本当の彼女」を「嘘偽りのない彼女」を愛した奴はいないのかな・・・・
そして書き上げました。
この物語を・・・
人類の歴史というのは確かに戦争の連続です。
譲り合えない正義同士がぶつかり合います。
その戦いの中には嘘も裏切りもあります。
でも、どんな時でも、そこに人間がいるかぎり、一つくらいは救いがある。
優しさがある。真実がある。僕はそう信じて戯曲を書き続けています。
これは世界で最も呪われた愛の物語
でも、そんな中にも、一筋の救いを見出していただいて
観劇後、暖かいものを胸に秘めてお帰りいただけたら幸いです。
雨が上がれば物語が始まります。
劇場でお待ち申し上げております。
原作・脚本・演出
藤沢文翁